マンガの貸本屋さん

図書館からの帰り道、いつも通る道なので見慣れているはずですが、
『マンガの貸本屋』さんに目が留まりました。
以前からそこにあることは知っていましたが、気に留めていなかったのです。
普通の住宅の表の戸に張り紙がしてあるだけの貸本屋さん。
きっと子供達が借りにくるのでしょうね。
そう思うと昔の事が急に思い出されたのです。


小学校の低学年の頃、家からずっと離れた町におばあさんがひとりでされている
『マンガの貸本屋さん』がありました。
当時、私はおこづかいらしいものをもらってはいませんでした。
というのも、学用品は買い与えているし、お菓子は家においてあるから
子供にお金なんて必要ないでしょう、というのがうちの親の考え方だったからです。
お年玉も全部、親が管理するからと渡すようにと言われて全部渡していました。
それでも、小学校3年生ぐらいになると、周囲でおこづかいの話が出始めて
うちの親も確か300円位だったと思いますが、くれるようになりました。


マンガは当時、悪者扱いされていましたので、当然、図書館にはありませんでした。
お金のない私は図書館で本を借りて読んでいました。
でも、友達は色々なマンガの事を知っていて、私は話題についていけません。
ある友達が『マンガの貸本屋さん』の事を教えてくれました。
10円で1冊、1週間借りられるとの事。
早速私は妹達を連れてそこへ行きました。
子供の足では2−30分かかります。
マンガの単行本が壁一面においてある棚にぎっしりつまっていました。
その光景に思わず興奮しました。
嬉しくて何冊か借りて帰りました。


基本的にルールは守る性格なので、きっちりと借りた本は返していました。
ところが、ある日、借りる為にいつものように備え付けのノートに
自分の住所と名前を記入していたら、貸主のおばあさんが
「あんた、●●町の子かいな。あかん。●●町の子には貸さん。
●●町の子は借りたもんを返さへんさかいな!」
と言われてしまいました。
そして、その日以来、出入禁止になってしまったのです。
とても悲しかったことを憶えています。


一部の人間がルールを守らなかった為に、●●町の子全員にそういう
レッテルが貼られてしまいました。
そんなの偏見や!ともんくを言ったところでどうなるものでもありません。


私にとって懐かしくて、苦い思い出です。